ハーグ条約に注意!


 国際結婚のカップルに限らず,離婚に先立って,お子さんを連れて別居を開始するというケースは多くあります.しかし,国際結婚の場合は,「ハーグ条約」の適用に注意が必要です.

 

 ハーグ条約によれば,もう一方の親の同意なく子どもを締約国の外に連れて出ることは条約違反となり,子どもが入国した先も締約国の場合,子どもを元の国に返還させることが国の義務となります.

 そして,この返還が求められている間,国は子どもに関わる離婚の手続を進めることができません

 

 

 したがって,夫婦の一方が締約国からお子さんを連れて出国した場合には,まず子どもを元の国に返すかどうか,返還を拒否する理由があるか,というハーグ条約の手続を先行して行うことになります.

 

 ハーグ条約については,日本では批准されて間がなく,情報が少ないため,別途情報ページを作成しました.

 ハーグ条約について詳しくはこちら

準拠法と離婚の方式


 

 離婚の手続や条件は,各国の法律で定められています.例えば日本法の場合,離婚届の提出による協議離婚,裁判所での話合いによる調停離婚,裁判所の判決による裁判離婚の3種類が定められており,いずれの場合も,例えば子供がいる場合,親権者を決めなければならないことなどが定められています.

 国際離婚の手続をするに当たっては,まず,お二人の離婚についてどの国の法律が適用されるかを確定する必要があります.

 

 実は,準拠法を決める世界共通の基準はなく,各国が準拠法を定める基準を持っています.日本では「法の適用に関する通則法」がこれに当たります.

 「通則法」によれば,①夫婦の国籍によって決まる法律が同一であればその法律,②夫婦の定住国が同一であればその国の法律,③夫婦に共通して密接に関連する国の法律,の順に決定します.ただし,夫婦の一方が日本に定住する日本人であればそれをもって日本法の適用を認めます.

 

 準拠法が日本法ということになる場合,協議離婚,調停離婚,裁判離婚の3種類がすべて認められます.

 ただし,協議離婚については,これを認めている国は世界的に少数派であり,相手の国で協議離婚を認めていない場合,日本で協議離婚が成立しても相手の本国では有効性が認められない場合がありますので,この場合は調停又は裁判の手続を選択することになります.

 また,調停,裁判の利用については,後述の国際管轄を検討する必要があります.

 

 準拠法が外国法ということになる場合,その国の法律に基づく成立条件に従って離婚が認められることになります.準拠法が協議離婚を認めていれば,日本で手続をする場合,日本の離婚届を提出するという方式でも有効な協議離婚になります.

 

国際裁判管轄


  「調停」または「裁判」という法的手続を利用する場合,どの国の裁判所に権限があるのか,国際裁判管轄が問題となります.

  これは,どの国の法律が適用になるかという準拠法の問題とは別個のもので,例えば準拠法がイギリス法で,管轄が日本にある場合,日本の裁判所がイギリス法を調査,適用して判決することになります.

 

 

 原則として,裁判所の管轄は,申し立てをされる側の居住国にあります.したがって,これから裁判を起こそうとする場合,相手が日本に居住していれば通常の離婚と同様に裁判所を利用できますが,相手が国外に居住している場合,原則的には相手の居住国の裁判所で訴えを起こすのが原則になります.

 ただし,この点について,例外的に,

・相手方が国外に逃亡し,所在不明となっている場合

・相手方の暴力等により,やむを得ず日本に帰国した場合

など,特別な事情が認められた場合に,日本での裁判管轄が認められた判例もありますので,個別に検討することになります.

 

成立した離婚の国外での有効性


 準拠法に従って離婚が成立した場合,離婚の成立を本国に届け出て,これを戸籍などの公的書類に反映させることになります.

 外国での離婚裁判等の場合,通常は管轄などの適法性を満たしている限り,日本でもそのまま有効性を認められ,訳文などを提出することにより戸籍に反映させることができます.

 

 ところが,例えば日本で協議離婚をした場合,協議離婚を認めていない国にそれを届け出ても有効性が認められず,「日本では離婚が成立しているが,その国では離婚が成立していない」という複雑な状況となる場合があります.この場合,再度その国が認める手続で離婚をやり直す必要が生じてしまいます.

 

 このような場合に備え,例えば,相手国の法律や,準拠法についての規律を調査した上,離婚の内容にあまり争いがない場合であっても,あえて調停手続を利用し,裁判所の調停調書という形にするなど,事前の対策を採ることが必要になります.

その他の問題


 離婚の成立のほかにも,特にお子さんがいる場合,養育費の問題,面会交流の問題など,国際間での法律や常識の違いから新たなトラブルの原因となることがあります.

 こういった問題についても,両国の法律を踏まえて,離婚成立段階でよく検討しておくことが必要です.